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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)110号 判決 1966年4月22日

上告人

河口真亀

右訴訟代理人

古田進

被上告人

吉仲敏男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人古田進の上告理由について。

論旨は、労働基準法八六条の審査請求があつた場合には、その手続の終了に至るまで同法八五条による時効中断の効力が維持される旨の原判決の法律解釈は誤であつて、本件災害補償請求権は時効完成して消滅したものである、と主張する。

同法八五条の審査の申立と同法八六条の審査の請求との関係は、訴訟における上訴と異なつて、申立期間の定めが規定されておらず、したがつて審査決定の確定という観念もないから、これを一体とみて同法八五条による時効中断の効力が同法八六条の手続終了に至るまで続いていると解するのは相当でない。しかし、同法八六条の手続は同法八五条の手続と類似の性質を有するから、時効の中断に関する同法八五条五項の規定は、同法八六条の手続の場合にも類推適用されるものと解するのが相当である。けだし、このように解しないと、同法八六条の手続中に二年の時効期間(同法一一五条参照)が満了し、審査の対象になつている災害保償請求権そのものが消滅してしまうという不合理な結果が生ずることになるからである。されば、本請求権につき消滅時効が完成していない旨の原判決の判断は、その理由はともかく、結論において正当であり、論旨は採用に値しない。

同二について。<省略>

よつて、民訴法四〇一条九五条八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のおとり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

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